モバイルデバイス
夏に気をつけたい注意ポイント!!

今年も暑い夏となっています!スマートフォン、モバイルバッテリー、ポータブル電源、携帯扇風機などモバイルデバイスは精密機械ですが、持ち運びが可能であり、外気温があがる夏には注意すべき点があります。
夏に気をつけたい注意ポイントを纏めました。参考にしていただき、大切な機器の故障や事故が発生しないようにして、暑い夏を乗り切っていきましょう!

共通して注意したいポイント

●高温環境下での利用・放置はできるだけ避けてください。

夏は外気温があがり、利用機器の使用環境温度(スマートフォンであれば5~35℃が一般的)以上の高温環境となる場所が増えます。
モバイルデバイスにはリチウムイオン電池が利用されており、リチウムイオン電池は熱の影響を受けやすい特性をもっております。

①故障・電池膨張・発火の恐れ
車のダッシュボードなどは真夏には80℃を超える場合もあり、高温になる場所におくと、故障・電池膨張・発火の恐れがあり、非常に危険となります。車のダッシュボードや炎天下、直射日光のあたる場合には、短時間でも放置はしない様、ご注意ください。

ダッシュボードの上は、85℃以上

ダッシュボードの上は、85℃以上

アスファルトの温度は60℃超え

アスファルトの温度は60℃超え

②電池が劣化する可能性
リチウムイオン電池は熱の影響を受けやすい特性をもっており、故障・膨張・発火に至らなくても電池が 劣化して、電池持ちが悪くなる可能性があります。
繰り返しとなりますが、車のダッシュボードや炎天下、直射日光のあたる場合には、短時間でも放置はしない 様、ご注意ください。

  • 車のダッシュボードは高温となり、80℃超えとなります。
  • 冷房をかけていてもダッシュボードの環境は高温となります。(エアコン23℃設定で30分でも60℃超え)ダッシュボードの上にスマートフォンを設置し、カーナビ利用している状態を想定し、85℃の温度環境にて バッテリー容量の低下を検証しました。

《高温環境下でのバッテリーの劣化検証》
【KDDI調べ】

容量 膨張
24時間 7%減 1㎜の膨張を確認
48時間 15%減 1~2㎜の膨張を確認
エアコンをつけていても(23℃設定。約30分)ダッシュボードの上は熱く、60℃超え

エアコンをつけていても(23℃設定。約30分)ダッシュボードの上は熱く、60℃超え

85℃で検証したバッテリー( 1~2㎜の膨張を確認)

85℃で検証したバッテリー
( 1~2㎜の膨張を確認)

※専門家が実験を行っております。大変危険ですのでマネしないでください。

今回の検証では容量の劣化と一時的な膨張が見られましたが、温度や期間、バッテリーの状況によっては、
「バッテリーの更なる膨張とそれに伴うスマホの破損」「バッテリーの発火」の可能性もありますので、
くれぐれも“車に置きっぱなし“はおやめください。

解説(劣化メカニズム)

リチウムイオン電池に詳しい
信州大学の是津教授にお話しを伺いました。

信州大学 是津教授

信州大学
是津教授

モバイルデバイス製品で特に注意すべきなのは、搭載されているリチウムイオン電池の特性です。
リチウムイオン電池は,内部で化学反応によりエネルギーを蓄えています。高温になるとその反応が加速し、電解液の分解や電極表面に形成する被膜(専門分野では、これを固体電解質界面(SEI膜))の破壊が進行します。
これにより、バッテリーの内部抵抗は上昇し、エネルギー効率が低下するとともに、繰り返し使用による「容量劣化」の速度が早まります。

さらに、温度が極端に上昇した場合には、セル内部のショート(内部短絡)や「熱暴走」と呼ばれる連鎖的発熱反応が起こります。最悪の場合は発火や発煙に至る危険性もあります。
これはバッテリー材料が持つ発熱反応(例:電解液の可燃性、酸化的分解)によるものです。

車内温度は60°Cを超える場合があり、電池の安全温度限界(通常は45°C程度)を大きく上回ります。
夏を安全に乗り切るためには、以下の点に注意してください:
①直射日光の下や車内(特に夏場のダッシュボードなど)に放置しないこと。
②充電中は発熱を伴うため,風通しの良い場所で行い、スマートフォンなど可能であればケースを外すなど放熱対策を意識してください。

異常な発熱や動作の遅れ、電池の膨れを感じた場合は、速やかに使用を中止し、専門業者に点検を依頼することを推奨します。
リチウムイオン電池は,非常に高密度のエネルギーを内包しています。正しく使えば安全ですが、予期していない熱ストレスに対しては繊細な部分もあります。適切な温度管理が、安全性と長寿命の鍵となります。

リチウムイオン電池を極端に高温または低温、高電圧、過度の電流にさらすと、電池の劣化が加速され、最悪の場合は電池の故障や発火につながる恐れがあります

リチウムイオン電池を極端に高温または低温、高電圧、過度の電流にさらすと、電池の劣化が加速され、最悪の場合は電池の故障や発火につながる恐れがあります

1.80°C付近
電極と電解液との反応や電解単独の熱分解反応が発生
(負極と電解液との反応が正極よりも先行)
【これを起こさせないことが大事】

2.140°C付近
セパレータの熱変形が発生
電極の熱分解(バインダーの分解)

3.200〜300°C付近
正極活物質の分解、酸素の放出

4.660°Cを超えた辺り
正極集電体のアルミニウム箔が溶解、
アルミニウムのテルミット反応により、
1000°C以上まで温度上昇

池の劣化に関わる化学反応

電池の劣化に関わる化学反応

1.80°C付近
電極と電解液との反応や電解単独の熱分解反応が発生
(負極と電解液との反応が正極よりも先行)
【これを起こさせないことが大事】

2.140°C付近
セパレータの熱変形が発生
電極の熱分解(バインダーの分解)

3.200〜300°C付近
正極活物質の分解、酸素の放出

4.660°Cを超えた辺り
正極集電体のアルミニウム箔が溶解、
アルミニウムのテルミット反応により、
1000°C以上まで温度上昇

●落下や水濡れに注意!

<落下注意>
夏は上着などを着ないことから、モバイルデバイスを収納する場所が少なくなり、直持ちするケースも想定されますが、その場合、落下の危険性もあがります。
モバイルデバイスに利用されているリチウムイオン電池は、落下による衝撃があると、発煙・発火のおそれもあります。落下による異常を感じた場合は、使用を中止し、修理などに出していただくよう、お願いいたします。

<水濡れ注意>
夏は水のある場所へ行く機会も増えたり、バッグの中に飲み物を一緒に持ち歩いたりするケースも想定されますが、濡れた状態で充電すると危険です。充電コネクタに飲料水や汗などの異物が付着すると、内部ショートによりコネクタ部が発熱・発煙し、触れるとやけどにつながる場合があります。防水機種でも、濡れてしまった場合は、取扱説明書を確認し、水気を切る必要がありますのでご注意ください。

最近は防水のデバイスも増えてますが、海水やプール内での使用を保証している場合は少なく、その場合は、防水機種であってもできるだけ濡らさないようにするか防水ケースを使用することをおすすめします。

スマートフォン

夏は、外気温が上がり、機器内部の熱を逃がすことができなくなり、スマートフォンも熱くなり易く冷めにくくなります。
夏は発熱を感じやすいほか、リチウムイオン電池の特性として高温環境下では劣化しやすい性質があり、故障・電池膨張・発火の可能性もあります。
スマートフォンはゲームや動画再生など連続使用しても低温やけどには至らないよう設計されておりますが、高温環境下では放熱性能が低下し本体温度が通常よりも高温になったり、発熱を抑えるために一部機能の動作が制限

●お客様からの問い合わせ【KDDI調べ】

スマートフォンの発熱に関する申告

●スマホ熱中症など具体的NG事例や注意ポイントなど、各社オウンドメディアでの記事を参考にしてください。

モバイルバッテリー/ポータブル電源

ポータブル電源やモバイルバッテリーは、保管場所にご注意ください。

前述の「共通して注意したいポイント」のとおり、夏の高温環境下は注意が必要です。
ポータブル電源やモバイルバッテリーはキャンプやDIYなどの屋外作業等でも利用されることも想定されますが、夏場の車内や真夏の炎天下などは短時間で高温になることもあり、リチウムイオン電池がダメージを受けやすい環境になります。
故障・電池膨張・発火の恐れ、電池寿命の短縮の原因となることもありますのでご注意ください。

携帯扇風機など季節商品

意外と思われる方も多いと思いますが、携帯扇風機にもリチウムイオン電池が使用されています。
前述の「共通して注意したいポイント」のとおり、高温環境下での使用や落下や水濡れについてご注意ください。
(参考)
NITE(製品評価技術基盤機構)によると、充電式の携帯用扇風機を充電していたところ突然火が出たり使用中にバッテリー部分が破裂したりする事故が、2020年~2024年の5年間に40件報告されています。

その他、健康への影響も注意が必要です。『動作環境温度』を超えていないのに周囲の温度が高いと、出る風が温風になります。そのまま当たり続けると、汗が乾く一方で体温は下がらず体調を崩す場合もあるので、下記のポイントも併せてご確認ください。

<意外と知らない注意ポイント!!>
・炎天下や直射日光のもとでの使用を避ける
・雨水、海水、飲み物などの水分がつかないようにする
・地面へ落としたり他の荷物で圧迫したりしない
・濡れタオルや冷感グッズを併用する
・ドライアイを防ぐために、目に直接風をあてない
・首に風を当てるときは髪が巻き込まれないようにする
・人の多い場所(満員電車など)では使用しない

本ページは、信州大学と下記企業(MCPC会員)のご協力のもと作成しています。
協力企業:(株)NTTドコモ、KDDI(株)、ソフトバンク(株)、楽天モバイル(株)アンカー・ジャパン(株)、(株)オウルテック、(株)センチュリー、多摩電子工業(株)、 (株)トップランド、(株)PGA

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